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監査法人に勤務する会計士が転職した時には、年収はどうなる?

監査法人に勤務する会計士にとって、30代前半というのは、転職を考える時期と言えます。この頃までには、殆どの人が、シニアスタッフになって、800~1000万円ぐらいの年収は取っているはずです。

この年代までは、それほど個人差がつきませんが、ここからは、競争が厳しくなり、マネージャー以上に昇進出来る人と出来ない人が、ハッキリと分かれてきます。

昇進組は、いわば会計士の勝ち組と言える存在なので、転職を考えることはなく、そのまま、シニアマネージャー、パートナーと目指していくという人が多いと思います。

(仮に、マネージャーにとどまったとしても、年収1100~1500万円は堅いので、それほど高望みしなければ、このまま定年まで勤めても、全く問題無しということになります。)

では、昇進出来ない人の場合は、どうでしょうか? ここで監査法人を出るという選択する人が少なくありませんが、その場合、年収が下がるケースが多いです。監査法人というのは、平均給与が高い業界なので、そのレベルを維持するのは難しいためです。

ただし、なかには転職することで、監査法人時代の収入を維持した人、もしくは、監査法人時代を上回る年収を手にした人もいます。そういった人は、具体的にどんなキャリアパスを取っているのか、まとめてみます。

キャリアパス1:投資銀行

公認会計士の転職先として、最も高年収が期待出来るのが、投資銀行や証券会社です。職種としては、経理財務・内部監査、法務といった管理部門系、もしくは財務デューデリジェンス・バリュエーションを担当するアソシエイト職です。

外資の投資銀行であれば、年俸1000万円以上は確実なので、監査法人時代の給与を超えられる人が多いでしょう。(一方、日系投資銀行の場合、700~1000万円程度になるので、人によっては、監査法人時代の年収を下回るかもしれません。)

ただし、投資銀行は人気なので、競争も厳しく、外資であれば20代のうちでないと、採用されるのは難しいかもしれません。日系の場合、もう少し、ハードルが下がりますが、それでも、32~33歳ぐらいが、上限値になってきます。

基本的に、若い人材を好む業界なので、投資銀行への転職を目指すのであれば、早く行動する必要があります。なお、外資の場合、年齢とともに学歴、語学力も重要です。高学歴で英語がネイティブクラスというのが、最も好まれる人物像です。

ちなみに、投資銀行は監査法人とは比べものにならないくらい、競争が厳しい業界なので、30代のうちに、役職につかないと、まず生き残れません。

一般企業やコンサルティング会社は、投資銀行出身者の経験・スキルを高く評価してくれるので、転職先に困ることはありませんが、年収は下がると考えたほうがいいです。

キャリアパス2:コンサルティング会社

公認会計士の転職先として見た場合、コンサルティング会社というのは、大きく4つの系統に分かれます。財務・会計系コンサルティング、金融系コンサルティング、税理士系コンサルティング、戦略系コンサルティングです。それぞれの特徴をまとめてみます。

財務・会計系コンサルティング

大手上場企業・金融機関に対する業務支援コンサルティングが中心となり、具体的には、上場企業の開示・財務諸表作成支援、日米財務諸表コンバージェンス支援、内部統制に関するコンサルティング、デューデリジェンスといった業務を担当することになります。

監査経験が、そのまま活かせる職種でもあるので、会計士にとっては、入っていきやすい分野だと思います。ちなみに、主査経験やプロジェクトマネジメントの経験があれば、高く評価される傾向にあり、年収の上積みが期待出来ます。

金融系コンサルティング

アセットマネジメント事業、投資・M&Aなどが主業務となります。かつては、年収が高かった分野なのですが、いまだにリーマンショックのダメージを引きずっており、求人数も少ないです。

最近は、復活傾向にありますが、会計士に対する需要は低調なので、ここを狙うのであれば、投資銀行への転職にチャレンジしたほうがいいと思います。

税理士系コンサルティング

会計士の場合、税務に対応するのは難しいので、組織再編・M&A・再生支援に伴う財務デューデリジェンスを担当するというのが、一般的な流れとなります。

そのなかで、税務に関する知識を習得して、会計・税務、どちらもカバー出来るようになることを目指すというのが、代表的なキャリアパスです。こうなると、仕事の幅が広がるので、その後のキャリアの選択肢が増えます。(なかには、独立する人もいます。)

ただし、年収については、間違いなく、監査法人時代よりも下がります。下手をしたら、300万円以上、減額になる可能性もあるので、慎重に考えたほうがいいです。

戦略系コンサルティング

発想力、創造力、マーケティング力、ロジカルシンキングなど、監査法人時代には、あまり重要視されることがなかったスキルが求められることになるので、会計士がいきなり転職するのは、なかなか厳しい分野です。

ただし、今は新規事業の立ち上げ、M&A、海外進出に積極的な企業が多く、戦略系コンサルティング会社が扱う案件が急増しているため、コンサルティング未経験者を積極的に採用するファームが増えています。

そのため、30歳前後であれば、転職に成功する可能性は十分にあります。戦略系コンサルティング会社は高学歴を好むので、国内トップクラスの大学、もしくは、海外MBAを持っていれば、強いです。(後者の場合、全米TOP30に入る大学院を出ていれば、ベストです。)

年収については、初年度は600~800万円がスタートになるケースが多いので、監査法人時代よりも下がるかもしれません。しかし、その後の昇給ペースはかなり速いので、数年で前職の年収を上回ると思います。

そのため、収入面に関しては、心配する必要はありませんが、戦略系コンサルティングというのは、激務の代名詞のような仕事なので、プライベートについては、ないものと考えたほうがいいです。

ワークライフバランスを重視する人の場合、少しくらい、給与が下がっても、別の仕事のほうがいいという判断になる可能性が高いので、この点は、じっくりと考えるようにしてください。

キャリアパス3:一般企業の管理職

一般企業の経理財務部門というのは、公認会計士にとって、最もスタンダードな転職先の一つです。監査法人出身者であれば、ある程度、年齢がいった人(40歳ぐらいまでは、チャンスあり)でも、転職出来る可能性があるのも、大きな魅力です。

ただし、年収については、管理職にならない限り、確実にダウンすると考えてください。なお、一般企業のなかでも、金融機関やグローバルメーカーであれば、給与は高めなので、ダウン幅を抑えることが出来るはずです。

キャリアパス4:ベンチャー企業の役員

株式公開を目指すアーリーステージのベンチャー企業であれば、上場を視野にいれて、公認会計士をCFOや経理部長のポジションに迎え入れるケースがあります。

上場基準での会計処理に耐えられるだけの経理体制の構築、ベンチャーキャピタルや証券会社などからの資金調達、会計事務所・監査法人への対応、上場申請書類の作成、内部統制の導入など、様々なタスクを同時にこなさなければいけないので、かなり大変です。

そのかわり、会社組織の構築にダイレクトにかかわることが出来るので、仕事の内容としては、非常にやり甲斐を感じるものだと思いますし、ゼロから創り上げる経験というのは、今後のキャリアを考えても、確実にプラスになるでしょう。

(上場したら、次の企業へ移るなど、ベンチャーを渡り歩いている人もいます。)

ただし、年収という観点で見た場合には、色々と複雑です。給与自体は監査法人時代よりも、下がることになりますが、ストックオプションが付与されることが多いため、上場に成功すれば、大きな利益を得ることになります。

もちろん、全てのベンチャーが上場出来るわけではなく、失敗するケースのほうが多いぐらいなので、かなりチャレンジングなことではあります。

なお、ベンチャー企業の場合、会計士としての実績は、もちろん重視しますが、それ以上に、行動力や自発性、タフさなど、人間的特性で多くのことが要求される傾向にあるので、はっきり向き・不向きが分かれると考えてください。

結論:監査法人は高年収

ここまで、公認会計士の主なキャリアパスについて見てきましたが、『監査法人に勤務する会計士が転職した時には、年収はどうなる?』という質問に戻ると、下がるケースが多いという結論になります。監査法人というのは、それだけ給与が高い業界ということです。

特に、大手監査法人の場合、福利厚生も充実していますし、就労環境の整備にも努めているので、一つの職場として見た時には、他業種では得られないレベルにあります。昇進が出来なくても、年収ということで考えれば、そのまま勤めるのも決して悪くない考えです。

そのうえで、あとは、自分のやり甲斐ということになってくると思います。やりようによっては、監査法人時代よりも、高い収入を得て、かつ面白い仕事に携わることも可能なので、転職のチャンスを模索するというのは、とてもいいことです。

ただし、監査法人で働き続ける or 離れるという決断は、その後の人生を大きく変えることになるので、安易に考えるのではなく、じっくり時間を取って検討するようにしてください。(監査法人への出戻りは、まず無理です。)

自分一人で判断を下すのは難しいという人は、会計士の転職支援を得意としている転職会社に相談してみるのもいいと思います。彼らは転職市場の動向を把握していますし、転職のプロなので、状況を客観的に分析してくれます。

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