介護老人保健施設は、病院を退院した後、自宅で普通の生活を送れるようになるために、介護を受けながら、リハビリを行う介護施設です。高齢者の場合、それまで健康だった人でも、一度入院してしまうと、それがきっかけで、体が思うように動かなくなるなど、動作に支障が出てくることがあります。
そのため、病気や怪我が治った後も、今まで通りの生活が送ることが難しくなってしまいますが、介護老人保険施設は、そういった高齢者が、身体機能を回復するためのサポートを行います。
介護老人保険施設の特徴
1:介護保険施設の一つ
介護老人保健施設は「老健」と呼ばれる介護施設です。介護保険の適用対象となるため、有料老人ホームなどのように、利用料が高額になる心配はありません。医療法人が運営母体となっていて、病院内や診療所と同敷地内に併設されて施設が多いです。
そのため、医療処置が充実しており、必要に応じて医療ケアを受けながら、リハビリを行うことが出来ます。
2:自宅に戻ることを前提とした介護施設
介護老人保健施設の最大の特徴は、在宅復帰を前提にした施設ということです。そのため、食事や排泄介助といった介護サービスも提供されていますが、これは補助的なものであり、あくまでも基本は、在宅での生活を送れるようになるためのリハビリです。
こういった背景があるため、終身制ではなく、入所期間は最長でも原則3カ月と決められていますが、3ヶ月が経過した時点で、さらにリハビリが必要と判断された場合には、継続してサービスを受けることも可能です。
何があっても、3ヶ月で退所しなければいけないというわけではないので、その点は安心してください。ただし、退所可能と施設側から判断された時には、本人や家族の意思にかかわらず、退所しなければいけないので、その点は要注意です。
3:様々な分野の専門家が集まっている施設
介護老人保健施設では、医療と介護、双方の支援を行う施設であるため、双方の分野における専門家を配置することが、法的に義務づけられています。
そのため、医師、看護師、介護士、リハビリを担当する理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、生活相談員、ケアマネージャーなど、様々な分野のプロが集まっています。これらの専門家が連携して業務を遂行するため、受けられるサービスの質はかなり高いものとなります。
4:自分に合ったリハビリサービスを受けられる
自宅での生活に戻るためには、自分の身の回りのことは、ある程度一人で出来るようにならなければいけませんが、では具体的にどのようなことが必要なのかというのは、一人一人違ってきます。
例えば、自分でも排泄が出来るようになることが最も重要な課題であるという人もいれば、居室内での移動やベッドからの立ち上がりを安全出来ることが課題という人もいます。自宅の環境を想定しながら、その人に必要な動作を考え練習を行うのが、介護老人保健施設です。
5:リハビリ効果につながるレクリエーションが多い
有料老人ホームなどと比べると、イベントや趣味活動などは充実しているとはいえません。そのかわり、手先のリハビリに効果がある書道や、折り紙などの飾りづくりなどをゆっくりじっくりと行うために時間が使われています。
6:併設のデイケア利用時にメリット有り
多くの介護老人保健施設には、自宅から通所しながらリハビリを受けられるデイケアサービスが併設されています。介護老人保健施設を退所して、自宅に復帰した後も、併設のデイケアに通所することで、継続的にリハビリを受けることが出来ます。
退所後も、馴染みの職員とかかわりを持ち続けることが出来るため、自宅へ戻られてからの不安や孤立感を和らげることにつながります。
介護老人保健施設への入居条件
下記の条件を満たす人が、介護老人保健施設への入居資格を得ることになります。
- 原則として、65歳以上で要介護1以上
- リハビリが必要であること
- 病状が安定していて、長期的な入院を必要としていない
- 感染症にかかっていない
先ほども触れたように、原則3ヶ月を入所期間として、自宅で日常生活を送れるようになるまで、サービスを受け続けることが出来ますが、下記のような状態に陥った場合には、途中でも退去することになります。
- 入所中に介護認定の更新などで、要介護度が要支援や自立となった時
- 病状の悪化などによりリハビリができない、またはリハビリの効果が得られないと判断された時
- 共同生活ができずに、他の入所者に対して、迷惑や傷害的な行為が行われた時
入居期間
原則3カ月間。自宅で暮らすことを目的にしているため、終身の利用は不可能ですが、実際には、介護老人保健施設でリハビリを受けた後でも、自宅への復帰が難しいという人もいます。
在宅への復帰が難しいのに、施設側から退去と判定された場合には、他の介護老人保健施設を探すことになります。もしくは、待機者の多い特別養護老人ホームに申し込みを行い、入居出来るまでの間に、介護老人保健施設を複数利用するという人もいます。
介護老人保健施設の費用
有料老人ホームなどに必要な入居一時金など、入居時にかかる金額は一切ありません。初期費用はゼロで入居することが可能です。その点は有り難いのですが、その反面、月額利用料は高めとなります。
介護老人保健施設の月額費用は施設により様々ですが、医師や看護師、リハビリスタッフ等、複数の専門家のサポートを受けるため、同じ介護保険施設の特別養護老人ホームなどと比べても、割高です。
介護保険で定められている施設サービス費、居住費の1割又は2割負担分と、食費、光熱費、日用品代など、施設が設定した実費分を合わせた金額になり、部屋のタイプが個室か多床室(相部屋)かで、差がありますが、おおむね10万~15万円程度になります。
介護老人保健施設で受けられるサービス内容
1:看護、医療的管理
介護老人保健施設は、病気を患っていた人達がリハビリを受ける施設なので、在宅復帰を目指す間の健康チェックが欠かせません。そのため、医療管理サービスが非常に充実しています。
多数の看護師が常駐して、毎朝、健康チェックが行われますし、リハビリによる病状の変化にも目を光らせています。入居者の健康相談にも、随時応じてくれるので、利用する側からすれば、とても安心です。
2:日常生活の支援
食事サービスや入浴サービス、排泄介助など、生活サポートを介護士から受けることが出来ます。利用者の自立を妨げないように、配慮しながら支援してくれるので、今現在、必要な介護を受けつつ、自宅復帰のための機能回復を図ることが可能です。
3:リハビリテーション
その人に合わせた計画書をもとにした、リハビリサービスを受けることが出来ます。体操やゲームなど、施設でなにげなく生活していることが、全てが在宅復帰へのサポートにつながるように工夫されています。